ホップのゆくえと、発酵する風景

南武線ビアマルシェ

── 南武線ビアマルシェ探訪記

「グリーンカーテンになるといいな」
そう思って、みんなで育てはじめたホップ。
けれど、その蔓は、まっすぐに──
上へ、上へと、のびたがっていました。

「こうなってほしい」ではなく
「こうなりたい」を聴くこと。

育てる手の中で気づいたのは、
植物の声を聴くことは、


わたし自身の“のびたい気持ち”にも
気づくことなのだということでした。


中央線の沿線で、ホップが芽吹いていた

先日訪れたのは、「南武線ビアマルシェ」。
中央線ビアワークスさんのブースをきっかけに、
沿線で進行している
プロジェクトのお話を伺うことができました。

もともとは、武蔵境にある
ブルワリーからの声がけを受けて、
「ホップを沿線で育てビールを作ろう!」
という動きが始まったのだそうです。

はじめはOEMでの製造からスタートし、
やがて自らのブルワリーを持ち、
ホップを自家栽培しながらの
クラフトビールづくりへ。

「最初の何年かはうまくいかなかったんです」
と静かに語る姿のなかに、
ホップとともにのびてきた時間が感じられました。

肥料の工夫、害虫の対応、量の問題。
3kgのホップがビールに必要だけれど、
育てただけでは到底足りない──
だからこそ、このチャレンジは
“育てること”そのものへの問いかけでもあります。

「肥料のことなど、相談に乗れますよ」
と、あたたかく言葉をかけていただきました。


駅でホップを育てるという発想

中央線でのユニークな取り組み。
それが、駅でホップを育て、
ビールをつくる「ぽっぽやエール」。

このビールは、中央線ビールフェスティバルから
生まれた新規事業のひとつで、
武蔵境駅の敷地で、なんと駅員さんたちが
ホップを育てているのです。

虫食い、猛暑、土作り──
決して簡単ではない栽培を、
駅の日常に取り入れていく。

そんな駅員さんたちの手仕事は、
駅構内のポスターや、
来場者との会話の中で、

自然とコミュニケーションの芽を
育てているようでした。

育てたホップは、
クラフトビール「ぽっぽやエール」として醸造され、
瓶のラベルには市民公募のイラスト。


まさに、“みんなで育てたビール”
なんですね。

通り過ぎるだけだった駅が、
立ち止まって植物を見守る場所へ。


その様子は、駅という“動線”が
“文化の根”という風にも
映ります。

こういう取り組みを
習っていきたいです。

中央線ビアワークス

(株)JR中央線コミュニティデザイン
新領域創造本部 地域活性化部
チーフの久保さんにお話をうかがいました。
接客の合間にお時間をありがとうございました。


ビールを片手に、土と向き合う夜

会場には、小さな縁日のような
子ども向けのコーナーもあり、

ベビーカーを押したファミリー、
会社帰りに待ち合わせをするお友達同士、
それぞれが思い思いに過ごしていて、
なんとも居心地のよい空気が流れていました。

地域に根づいたイベントらしい、
やわらかなにぎわい──

ビールだけではなく、人と人の
“暮らしの風景”が広がっていたように思います。

その日は、マルシェのスタンプを集めながら、
唐揚げやポテトを片手に、
3種類のビールをいただきました。

ぽっぽ屋ビール

🌿 ポッポ屋ビール
(中央線ビアワークス)
クラフトのやさしさと、
どこか懐かしい軽やかさ。

黒ビール

🌿 Porter「黒い弛緩」
(東海道ビール)
クローブとバナナの香りがふんわりと重なり、
黒ビールの奥にゆったりとした時間が
流れ込むようでした。

CAGHIYA Brewery

🌿 シャンペーンスーパーノヴァ
(CAGHIYA Brewery)
マスカット果汁とシャンパン酵母の
フルーツホワイトエール。


苦味が少なく、
ワインのように飲みやすい1杯でした。

気がつけば、ひとりで2時間以上も
過ごしていて──

植物がのびるように、わたしもゆっくりと、
時間をのばしていたように思います。


わたしたちの手の中の
ホップにも、物語があった

「グリーンカーテンをつくろう」
そう思って始めたホップ栽培。

けれど、ホップは“横にひろがる”のではなく、
“上へとのびていく”植物だった。

「そっちはちがうの」
そう囁いていたのに、
わたしたちは、一生懸命に、横へと
誘引していたのかもしれません。

思い込み、期待、正解。
そういった“育てる側の形”から
自由になったとき、

植物のほうが、ほんとうの
「のびたい方向」を教えてくれます。

植物にとって心地よい方向を、
わたしも一緒に見上げられるように──

そう思えたとき、
からまっていた“わたしの蔓”も、
すこしほどけた感じがしました。


育てることを通して、つながる

「ぽっぽやエール」も、
「中央線ビールフェスティバル」も、
そして、わたしたちが育てている
小さなホップも──

そこには、誰かと手を動かしながら
過ごす時間があります。

声をかけたり、アドバイスをもらったり、
ときには思いがけない会話が生まれたり。

育てることは、ただ植物が育つだけではなくて、
人と人のあいだに、やわらかな時間を
つくってくれるのかもしれません。

そして、もうひとつ。

植物のそばにいると、
今は“芽”のままでも、

ちゃんと意味があるんだって、
そんなふうに思えるときがあります。


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